高専賃をもっと知るための高専協通信

一般財団法人 高齢者専用賃貸住宅協会(高専協)の高専協通信

一般財団法人 高齢者専用賃貸住宅協会のメルマガ高専協通信を転載いたします。高齢者専用賃貸住宅(高専賃)である生活支援サービス付住宅 山の手サザンコートといわゆる「施設」との違いを知っていただく一助になればと思い転載いたしましたのでご参考になさってください。

筆者紹介:橋本 俊明 (㈱メッセージ会長)
高齢者専用賃貸住宅事業者協会(略して高専協、平成21年3月24日に発足)会長
1948年(昭和23年)岡山市生まれ、60才。
1973年(昭和48年)岡山大学医学部を卒業
以後外科医として約20年医者をし、1993年ごろから、高齢者ケアに転向
その後1999年、(株)メッセージを創業、現在に至る。

◆◆高専協通信 第1号◆◆高専協通信 (メルマガ:高専協通信 第2号 2009年4月15日より)

私は、病院、老健、特養、グループホーム、ケアハウス、介護付き有料老人ホームなどいろいろの(時にはスポーツクラブも)施設を手がけ今日に至っております。

これらの施設は、それなりに存在意義はあるのですが、多くの高齢者にとって、住み慣れた自宅とかなり異なった住まいであることは確かです。高齢になったり、障害が発生したりしても、多くの高齢者は、自宅と同じように、気ままな住まいを望んでいることは確かでしょう。その意味で、高齢者専用賃貸住宅は、多くの高齢者が待ち望んだ住まいなのです。

しかし、高齢者が、高専賃のことを知っているかと言うと、はなはだ心もとない限りです。
耳にした人がいたとしても、高円賃?高優賃?高専賃?などと言われると、「一体どうなっているの?」と思うのではないでしょうか。

従って、この協会の第一の使命は、高専賃を初めとする、高齢者住宅の名前の普及、そして、内容の理解を広めることにあると考えています。高専賃の認知が高まるとともに、会員の皆さんが運営されている建物に対する期待も高まるのではないかと思います。

今後、皆さんのご協力を得て、会の発展に尽力したいと思いますので、よろしくお願いいたします。


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◆◆高専協通信 第2号◆◆ (メルマガ:高専協通信 第2号 2009年4月30日より)

さて、前回に引き続いて、高専協は、どの様にあるべきか、また、どの様な活動を行っておくかについて、ご説明をしたいと思います。

 高齢者集合住宅は、高齢者、行政双方にとって、最も良い選択と言えるのですが、なぜか日本では、現在まで、高齢者集合住宅が普及せず、マスコミも好意的な取り上げかたばかりではありません。

 2005年12月に、高専賃が制度化され、その直後は、高専賃に期待するような記事が多かったのですが、その後、昨年から今年にかけて、一部のマスコミは、次第に懐疑的な論調となっています。
その理由を考えてみましょう。

 規制で守られている老人ホームは、表面的には規則どおりの介護を行なっていると思われています。
事実、とんでもない施設は少ないでしょう。これに対して、高専賃は、規制がないので、最低限度の基準が分からない、という側面がありました。一部の逸脱した高専賃を取り上げて、高専賃全体に疑問を呈している記事も見られます。

 高齢者専用賃貸住宅を普及させる為に、私達は、事業者団体を作ったわけですが、その目的は、高専賃の認知を高めるとともに、最低限の品質を保証することにあります。その為には、つぎの3つの点が大切となります。

 第一は、部屋の広さや設備です。現状では高専賃の広さ、設備について基準はありません。

 第二は、入居契約です。高専賃は賃貸住宅ですから、借家権が確保されなければなりません。施設には借家権がなく、施設の意向によって、居室を移転させられることがあります(つまり施設利用権で自分の部屋の権利ではない)。
 
 第三に、サービスの提供をどのようにするかです。サービスの提供は、高専賃の事業者が行なうのか、完全に外部事業者が行なうのかまた、サービスの選択が完全に自由になっているのかどうか(原則として自由なはずですが)についての基準を作る必要があります。

 この様な3つの視点から、現在当協会(高専協)では、作業部会をつくり、品質を確保するための基準をつくる作業を行なっています。
 次回は、この3点について、さらに説明をしたいと思います。


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◆◆高専協通信 第3号◆◆ (メルマガ:高専協通信 第3号 2009年5月13日より)

この20年、すでに「失われた10年」の2倍を経過しましたが、日本の社会は、20年前より、良くなったとは言えない状態です。社会正義の実現は、ヘーゲルのいわゆる「人倫国家」で述べられ
ているように、自由に活動する市民が、同時に社会全体に対して大きな関心を持つことにあります。
自由の相互承認の原則に沿って、他者の自由も最大限尊重する態度が求められます。

前回、高齢者専用賃貸住宅を普及させる為に、3つの点が重要であると申し上げました。第一は、部屋の広さや設備、第二は、入居契約、第三に、サービスの提供方法です。
 
特に住まいとしての高専賃について述べたいと思います。住宅政策は社会保障の基盤です。しかし、現在介護・医療の問題のみが大きく取り上げられ、住宅の問題がなおざりにされているようです。
デンマークで提唱されている「高齢者は介護対象でなく、生活主体である」との言葉を銘記すべきでしょう。

障害者、高齢者(特に障害がある高齢者)、低所得者にとって、生活の基盤である住宅が、国の社会保障政策としてどの程度のものであるのか、最低限度の基準が明確ではありません。

先般来話題になっている、生活保護者を対象とした、いわゆる「貧困ビジネス」についても、狭い部屋に、多人数の人が同居している状態が住まいと言えるかどうか?など、住宅についての一定の基準が明確であれば、自然に解決する問題でしょう。

高専賃が主導的な役割を果たすためには、高齢者住宅の基準となる必要があります。面積はどの程度か、設備はどうかなどです。現在審議されている改正法案では、部屋面積25㎡を一応の基準としています(一部18㎡)。設備については、バス、トイレ、キッチンの設備が望ましい(共有のものがあれば可)とされています。

この様な明確な基準に沿った住宅作りが行なわれ、基準に沿った住まいに対しての補助があれば、現在の高齢者介護の問題の多くは解決できるのではないでしょうか。


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◆◆高専協通信 第4号◆◆(メルマガ:高専協通信 第4号 2009年5月27日より)

5月13日高齢者居住法(高齢者の居住の安定確保に関する法律)改正案が、参議院を通過しました。
細目については、省令で決める事となっていますが、8月までには発令されると言われています。

内容については、このメールで既にお知らせしていますが、高専賃の部分のみで言えば、従来の簡単な届出のみの制度から、より厳格に高専賃を規定するものとなっています。

高専賃の建物設備の基準が従来なかったものが、いわゆる適合高専賃並になります。また、地方自治体は、全体の供給計画を策定し、届出を受け付けた後にも、その動向を見守ることが出来るようになりました。

全体として規制が強くなった印象ですが、一定以上の基準が導入されることによって、高専賃全体の価値があがり、事業自体がやりやすくなるのではないでしょうか。

私達が調査した、主要紙の過去4年間の高専賃についての記事でも、高専賃が誕生した2005年12月からみると、2006年ごろには、高専賃に期待する内容が多かったのですが、次第に否定的な論調に変化しています。

2006年、好意的記事1件、中立的記事1件、否定的記事 0件、
2007年、好意的記事8件、中立的記事5件、否定的記事 0件
に対し、
2008年になると 好意的記事4件、中立的記事2件、否定的記事3件、
2009年度4月までで、好意的記事1件、中立的記事4件、否定的記事2件
と次第に中立的、否定的な記事が増えています。

否定的記事の内容は、情報が少ない、登録内容と実態とが異なる、有料ホームの届出が行なわれていない、サービスが不十分、エレベーターさえない場合がある、賃貸住宅に比べ入居時に支払う前払い金が高額、規制対象外で質やサービスをチェックする体制がない、パンフレットの表記方法についての基準がゆるい、サービスが施設ごとに大きく異なる、などです。

私達は、この様な批判を受け止め、今回の高齢者居住法の改正をむしろ好機と考え、高専賃全体の質を高める必要あるのではないでしょうか。そうすれば、今回の法改正を事業の発展のための有力な手段と捉えることも出来ると思います。


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カテゴリ◆◆高専協通信 第5号◆◆(メルマガ:高専協通信 第5号 2009年6月10日より)

社会保障は、長期の目標が必要であり、極めて専門的な知識と、その時代の国民の意向とを考えて、理念的な考えを基礎とし、計画的な視点から立案しなくてはなりません。

例えば、最近の風潮に見られるように、特別養護老人ホームの不足を取り上げ、老人介護施設が必要であるとの意見は、極めて短期的な視野から考えられています。将来日本が人口減少を向かえて、個人の幸福を実現するためには、どのような社会保障政策を取るかが重要となります。

いわゆる高齢者介護施設を増やすような政策を、高齢者が望んでいるかどうかは疑問です。一般の人に質問すると、高齢になったら、家族や友人に迷惑をかけたくないが、自由な生活をしたいと言う答えが大半です。一方高齢者を抱えている家族は、介護施設がほしいと訴えます。

つまり、一般の人たちの要望は、高齢者を抱えている自分としては、介護施設がほしいのですが、自分が高齢者になった場合には、現在の介護施設には入りたくはないというわけです。

高齢者対策は、本来高齢者自身の要望に応じて立てられるべきであるのは当然のことです。その上で、介護者の状態に注意を払うべきなのです。しかし、現在の介護政策は、高齢者の気持ちからでなく、介護者の要望を主として建てられていることが多いのです。

次回は、では高齢者ケアの先進的な国はどのような考え方を持っているかをご紹介しましょう。


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カテゴリ◆◆高専協通信 第6号◆◆(メルマガ:高専協通信 第6号 2009年6月24日より)

高齢者ケアの先進的な国といえば、北欧の国々を思い浮かべるでしょう。スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドなどの国々は、いずれも所得が高く福祉が充実していることで有名です。
しかし、所得が高いことは、生産性が高いことを意味しています。私達は、企業の生産性と福祉とは相反するものだと考えることがありますが、これらの国を見ているとそうではないことがわかります。

代表的な国として、デンマークを取り上げて見ましょう。デンマークの高齢者ケアの基本は3つの原則から成りたっています。
「生活の継続性」
「個人の能力の活用」
「自律性と周囲の環境に対する影響力-つまり自己決定」
です。
これらは、ネット上に、デンマーク政府のSocial Policy(社会政策)として掲載されています。何が大切なのかを堂々と表示していると非常に分かりやすいのです。

この内、「自律性と周囲の環境に対する影響力-つまり自己決定」の原則は特に重要で、その為には、相互のコミュニケーションを十分にとらなければなりません。高齢者は、目や耳が不自由な人が多く、中には認知症にかかり、コミュニケーションが取りにくい場合もあります。少し意思の伝達が難しいからといって、家族を代理にしてすべてを決めてしまうなどのことを戒めているのです。

障害を持つ場合、特にコミュニケーションの障害がある場合、高齢者は周囲から取り残され、十分に情報をもらうことが出来ない状態に陥ります。一般の障害者に対して、その障害を原因として、話を
しないことは考えられませんが、高齢者の場合は習慣的に、家族を通しての意思の伝達が日常化しています。

多くの場合、高齢者の処遇の困難さは、高齢者に対して、十分な情報の提供を行なわないことから生じているケースが非常に多いのです。特に、高専賃のような普通の住まいを提供する場合、高齢者に
十分な情報を提供して、自己決定を行なわせることにより、後に生じる問題行動を防ぐことが出来るのです。


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◆◆高専協通信 第7号◆◆(メルマガ:高専協通信 第7号 2009年7月8日より)

高齢者居住法改正案が国会を通り、施行のための手続きが行なわれています。法律を実行する場合、法案に関する施行規則、省令、通達などが発効されますが、国交省は、恒例の「パブリックコメント」 -(国民に対して広く意見を求めること)を募集しています。

内容は各種ありますが、その中で「高齢者の居住の安定確保に関する法律施行規則の一部を改正する省令案」のうち、(2)高齢者円滑入居賃貸住宅の登録制度の整備についての項目が、会員の皆さんにとって最も関係する項目かと思います。詳しくは、高専協ホームページの7月7日付け「お知らせ」をご覧ください。

内容を簡単にご紹介すると、

(ハ)高円賃の登録基準を以下の通り追加することとする。

【1】各戸の床面積について
・床面積が25㎡以上であること(共用部分がある場合は18㎡以上、13㎡以上で高齢者居住安定確保計画で別に定める場合にはその面積とする。)

【2】構造及び設備について
・原則として、各戸が台所、水洗便所、収納設備、洗面設備及び浴室を備えたものであること(共用部分に台所、収納設備若しくは浴室を備える場合又は高齢者居住安定確保計画に定めた場合にあっては、この限りでない。)

【3】賃貸の条件について
・前払家賃、契約一体型サービスに係るサービス対価前払金、一時金(家賃6ヶ月分以内の敷金を除く。)の算定の基礎が書面で明示されており、かつ国土交通大臣が定める保全措置が講じられていること
・契約一体型サービスである場合には、当該サービスの内容及びその対価の概算額が書面で明示された契約と賃貸住宅の賃貸借契約を別に締結すること

などとなっています。
ご意見のある方は、高専協事務局へご連絡ください。

内容については、あいまいな部分が多く、地方自治体の裁量に任されている項目が多いようです。法令に銘記されない場合、裁量行政になりやすいので、今後も各都道府県がどの様な考えで対処するのかについて、皆さんからの情報をお待ちしています。

個別の事業者で対処が難しい問題があれば、高専協として積極的に、行政に要望をぶつけていこうと思います。


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カテゴリ◆◆高専協通信 第8号◆◆(メルマガ:高専協通信 第8号 2009年7月22日より)

有料老人ホームと、高専賃の関係が今までも分かりにくかったのですが、今回の改正でどの様になったのか、改めて説明したいと思います。

もともと、高専賃(賃貸住宅)と、有料老人ホーム(施設)とは、比較すべき対象とは言えないのですが、(病院と有料老人ホームの比較が出来ないことと同じ)、外観や入居者の状態から、混同されやすいことは事実です。今回は、法的な面から、高専賃と有料老人ホームとの違いを見ていきましょう。
 
まず、「有料老人ホーム」の定義です。

有料老人ホームとは、老人福祉法第29条に規定される、老人を入居させ、
  1.食事の提供
  2.入浴、排せつ又は食事の介護
  3.洗濯、掃除等の家事
  4.健康管理
上記4つのうち「いずれかの」サービスを行う施設です(委託で行う場合や将来の供与を約束する場合も含む)。

⇒事実上は、最も基本的なサービスである食事の提供によって、有料老人ホームと認定される場合が多い。

ただし、次の施設は有料老人ホームに該当しません。

 【老人福祉施設(特別養護老人ホーム、老人短期入所施設、養護老  人ホーム、軽費老人ホーム(ケアハウスを含む))、認知症対応型老人共同生活援助事業を行う住居(認知症高齢者グループホーム)】 ⇒言うまでもありませんね。

次に、「高齢者専用賃貸住宅」とは、

「高齢者の居住の安定確保に関する法律施行規則(平成13年国土交通省令第115号)」第3条第6号に規定する高齢者専用賃貸住宅のうち次の「全ての」要件を満たすもの。

【1】各戸が床面積(共同住宅にあっては、共用部分の床面積を除く)25平方メートル(居間、食堂、台所その他の部分が、高齢者が共同して利用するため十分な面積を有する場合にあっては、18平方メートル)以上であること。

【2】原則として、各戸が台所、水洗便所、収納設備、洗面設備及び浴室を備えたものであること。ただし、共用部分に共同して利用するため適切な台所、収納設備又は浴室を備えることにより、各戸に備える場合と同等以上の居住環境が確保される場合にあっては、各戸が台所、収納設備又は浴室を備えたものであることを要しない。

【3】前払い家賃(敷金を除く)を徴収する場合、「高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成13年法律第226号)」に基づく必要な保全措置が講じられているものであること。

【4】入浴、排せつ若しくは食事の介護、食事の提供、洗濯、掃除等の家事又は健康管理をする事業を行う賃貸住宅であること。

 ⇒高専賃において、有料老人ホームに該当しないものは、以上のように、【1】から【4】をすべて満足したもののみとなっています。

従来から、これに該当しない場合には、高専賃であっても有料老人ホームの届出が必要でした。このことは、法律の改正後でも変わりません。

この内【4】は、介護保険法で65歳以上になり、介護度が一定以上になると、限度額の範囲では、介護保険を用いてのサービスを受ける権利が保障されていますから、原則的にはあまり問題とはなりません。有料老人ホームの除外を受ける為に必要な項目は【1】から【3】となります。

今回の高齢者居住法の改正で、【1】の面積に関する部分、【2】の設備に関する部分、【3】の前払い金に対する保全措置は、高専賃(高円賃)自体の定義とほぼ同様となりました。従って、今回の改正で、高専賃(高円賃)として登録される住宅の大部分は、有料老人ホームの届出を行なわなくてもよいものとなりました。

なお、この様な有料老人ホームの届出を行なわなくてもよい住宅のうち、「希望すれば」適合高専賃として登録することも可能となっています(届出を行うかどうかは事業者の自由意志です)。

適合高専賃の指定を受けると、
 〔1〕指定基準を満たした場合は「特定施設入居者生活介護」の指定を受けることが出来る。
 〔2〕住所地特例の対象施設となる。
となります。


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◆◆高専協通信 第9号◆◆(メルマガ:高専協通信 第9号 2009年8月5日より)

前回、高齢者集合住宅と有料老人ホームの違いについて、居住面積に関する法的な側面からお話しましたが、今回は、歴史的な成り立ちの点から見ていきたいと思います。

日本では、高齢者の居住に対して、住宅政策と福祉政策が異なった部署でおこなわれて来ました。住宅政策は建設省(現国土交通省)福祉政策は厚生省(現厚生労働省)です。

戦後の高齢者に対する住宅政策は、1960年代の公営住宅、ついで1970年代、公社・公団住宅、1980年代には、シルバーハウジングプロジェクト、1990年代のシニア住宅、高齢者優良賃貸住宅の制度に続き、2001年「高齢者の居住の安定確保に関する法律」の制定を見ています。

2005年には、高齢者を対象とした「高齢者専用賃貸住宅」が制度化されました。これらの政策は、一般住宅から高齢者向け住宅への流れの基に、居住権(賃貸借契約)に基づく、賃貸住宅の一部として整備されて来ました。

高齢者ケアを居住中心として捉える見方は良いのですが、ただ、障害を持つ高齢者に対しては無力であり、介護保険が成立しても、これらの高齢者住宅へ介護が十分に提供され、障害を持っても高齢者住宅へ住み続けることが出来るようには、なりませんでした。

介護保険が在宅サービスを中心としているにも関わらず、制度的に問題がある為に、かえって、在宅から施設への移動を促進することになり、在宅(高齢者集合住宅)で生活できるのは、比較的障害が少ない人だけだったのです。

これに対して、高齢者に対する福祉政策は、戦前の「救護法」に始まり、戦後の「生活保護法」で対処され、「入居者」も「収容者」と表現されるなど、上からの福祉の色彩が強かったのです。

1963年の「老人福祉法」で、低所得者対策とは一応切り離されたもの「収容者」イメージは残り、住まいというより「収容」でした。1980年代からの、病院の高齢者施設化は、そのイメージを増幅させました。1990年代からの大規模な高齢者対策(いわゆるゴールドプラン)においても、高齢者施設の「収容」イメージは継続しています。

2000年からの介護保険は、在宅重視に反して、高齢者施設の需要を大幅に増加させました。現在でも、依然として、高齢者施設、特に介護保険施設は住まいの感覚からはかけ離れています。
 
この二つの政策が合体した結果として、「高齢者集合住宅が施設化する」のか、「施設の住宅化を促進する」のか、あるいは、「施設と住宅との間に明確な一線が引かれるのか」が、今後の問題です。

安全・安心のみを求めると、「住宅が施設化する」ことになります。従って、両者の間に明確な仕切りを設けて、高齢者集合住宅の促進を行なう必要があります。明確な基準の下に、有料老人ホーム化しない、良質の高齢者住宅が望まれます。


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◆◆高専協通信 第10号◆◆(メルマガ:高専協通信 第10号 2009年8月19日より)

5月に国会で成立した、高齢者の居住の安定確保に関する法律の一部を改正する法律(いわゆる高齢者居住法)の改正が、8月中に施行されます。特に高専協の会員の皆さんに関係する、高専賃の登録基準の変更については、すでにお知らせしている通り、居室の面積については、従来の基準を設けない登録から、25㎡以上(共有部分があれば18㎡以上)のみを登録基準としています。

既存の高専賃については、本年11月から再登録を開始し、2010年(来年)5月までに再登録を締め切るとの考えです。高専賃として登録されない場合には、有料老人ホームとしての登録が必要となります。つまり、あいまいな状態(有料老人ホームか高専賃かよく分からない状態)はなくなります。

有料老人ホームと高専賃の違いは、登録面積もありますが、入居契約の内容も重要です。すでにお知らせしているように、有料老人ホームは、利用権契約であり、高専賃は賃貸契約、と本質的に契約形態が異なっています。今後居住面積の問題と同様に、入居契約について、正しい賃貸契約となっているかについて、特に地方自治体レベルでの審査が厳しくなっていくと考えられます。

また、生活支援サービスを行なっている高専賃(大部分がそうだと思いますが)は、生活支援サービス契約書を、賃貸契約とは別に利用者と結ぶようになります。今までは、賃貸契約書と、有料老人ホームの利用権契約書を混同している例も見られます。また、生活支援サービス契約書を賃貸契約と分けずに結んでいる例もあります。
この様な契約形態の変更を早急に行なう必要があります。

高専協では、会員の皆さんに対して、賃貸契約と生活支援サービス契約のモデル契約書をホームページに掲載する予定です。また、高専協事務局では、会員の皆さんに限って、契約書の点検サービスを行なう予定です。期日は未定ですが、9月初旬にはサービスを開始したいと思っています。会員の皆さんに対しては料金無料です。後日、事務局から会員の皆さんに対して、ご案内をすると思いますので、ご利用ください。

施設から住宅への転換時期になり、制度的にいろいろと複雑になっています。高専協では、会員の皆さんからの質問に対して、各方面と打ち合わせを行ないつつ、有益な情報を提供しています。各地域の行政当局との問題、入居者との問題、あるいは介護・医療関係機関との問題などについて、ご質問を気軽にお寄せください。


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◆◆高専協通信 第11号◆◆(メルマガ:高専協通信 第11号 2009年9月2日より)

総選挙では民主党の大勝でしたが、高齢者ケアあるいは、高齢者住宅の分野に対して、の対策はあまり見えてきません。民主党のマニフェストから抜粋すると、私達の関係する分野では、以下のような項目が該当すると思われます。
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 25.介護労働者の賃金を月額4万円引き上げる
 【政策目的】
   ○全国どこでも、介護の必要な高齢者に良質な介護サービスを提供する。
   ○療養病床、グループホーム等の確保により、介護サービスの量の不足を軽減する。
 【具体策】
   ○認定事業者に対する介護報酬を加算し、介護労働者の賃金を月額4万円引き上げる。
   ○当面、療養病床削減計画を凍結し、必要な病床数を確保する。
 【所要額】
    8000億円程度
────────────────────────────────
 44.環境に優しく、質の高い住宅の普及を促進する
 【政策目的】
   ○住宅政策を転換して、多様化する国民の価値観にあった住宅の普及を促進する。
 【具体策】
   ○多様な賃貸住宅を整備するため、家賃補助や所得控除などの支援制度を創設する。
   ○定期借家制度の普及を推進する。ノンリコース(不遡及)型ローンの普及を促進する。土地の価値のみでなされているリバースモーゲージ(住宅担保貸付)を利用しやすくする。
────────────────────────────────
高齢者ケアの分野については、介護職員に対する賃金の改善がありますが、今年度実施される介護職員処遇改善交付金のようなものでなく、介護報酬の引き上げによって賃金の改善が実施される様に期待します。

私達は、高齢者施設から住宅への転換を促すような政策を期待しているわけですから、当面は、具体的にどの様な政策を掲げるかを注視していきたい。その上で、必要があれば、積極的に、高専賃の拡大あるいは、サービスに対する改善を働きかけて行きたいと思います。


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◆◆高専協通信 第12号◆◆(メルマガ:高専協通信 第12号 2009年9月2日より)

いよいよ政権交代が実現しましたが、差し当たり、私達の事業に関係する、建設行政、厚生行政は、民主党のマニフェストに目立った記載がなく、政権交代による大きな政策変更は起こらないと思われます。 しかし、すでにお知らせしているように、5月の法律改正によって高専賃の登録、運営の内容は大きな変化がおこります。

「高齢者の居住の安定確保に関する法律の改正」後、8月19日に厚生労働省老健局長と国土交通省住宅局長の名前で、各自治体あてに、通達が出ています(老発0819第1号、国住備第61号)。

この通達は、都道府県、政令指定都市、中核市に対して、今回の法改正の要旨と、法令の運用基準を示したものです。

その中で、高専賃に最も関連するものは、「第四 高齢者円滑入居賃貸住宅の登録基準の設定等について」の部分です。中でも、高齢者円滑入居賃貸住宅(高専賃も含む)の再登録についての箇所には注意が必要です。

この部分には、次のような記載があります。

「現在の高円賃(高専賃)登録は、平成22年5月19日にその効力を失う。新基準に基づく登録の申請は、平成21年11月19日より行なうことが出来る。」
とされています。さらに、登録に当たっては以下のように記載されています。

「従来と異なり、登録基準を設定したことによって、当該基準(今回の改正基準)への適合を都道府県知事が常時把握できるようにするとともに、登録基準と実態が異なる事態を防ぎ、高齢者が安心して選択することが出来るように、登録事項に関する虚偽の有無を確認できるよう、都道府県知事が賃貸人に対し賃貸住宅の管理に関する報告を求めることが出来る」。

つまり、再登録に際しては、従来のように、単純に登録を受け付けるのではなく、各自治体によって、登録基準に適合しているかどうかのチェックが行なわれるわけです。登録基準は、面積、設備の基準とともに、賃貸契約の内容に及びます。

そして、この通達の最後には、「高齢者円滑入居賃貸住宅のチェックリスト」が記載されています。この内容は、高専賃の登録の際にチェックすべき、賃貸借契約の内容について明示しています。

その内容は、
 【1】賃貸契約である旨が明記されていること 
 【2】賃貸借の対象物が明記されていること 
 【3】賃貸借の対象物に対する賃料に相当するものが明確であること(賃貸契約―賃料と共益費―と、生活支援サービス契約が分離されていること)の3点が強調されています。

高専賃の再登録に際して、面積や設備については、明確な基準があり、特に変更を加えなくてもよい場合が多いのですが、賃貸契約については、従来の契約を変更しなければならない場合があります。

当協会では、11月19日からの、高円賃(高専賃)の再登録に際して、変更を加える必要が大きい契約書の内容についての審査の助けとなるように、賃貸契約書の点検サービスを行なっています。

登録の際に何らかの問題が生じた場合、当協会が都道府県に対して、申し入れを行なう場合もありますから、登録前の、賃貸契約書点検サービスを利用されるよう、お薦めいたします。


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◆◆高専協通信 第13号◆◆(メルマガ:高専協通信 第13号 2009年9月30日より)

最も新しい 2009年9月末の集計によると、高専賃登録数は、1,492ヶ所、総戸数は 38,305戸に達しています。今年(2009年)に入ってからは、298カ所、8,116戸(8月末)建設されています。

昨年は、戸数で毎月 870戸程度の増加でしたが、今年に入ってからは毎月平均10,145戸増加しています。今後も、高専賃は現在以上に増加すると考えられます。そして、日本の高齢者の住まいに大きな地位を占めることになります。

ちなみに、介護付き有料老人ホームは136,000室程度、グループホームは、139,000室程度といわれています。これ等に比べると、高専賃はその戸数で 4分の1程度に過ぎませんが、これ等の施設の増加は少なくなっているので、その高専賃の割合は今後とも増加すると考えられます。

高専賃の特徴は、現在先進緒国が共通に抱えている高齢化の進展に対する処方箋としての、「地域居住」= aging in place を促進するものと捉えることが出来ます。

「地域居住」とは、いくつかの特徴を持った考え方です。当然ながら、それは、「住まい」であることが基準です。「住まい」とは、高齢者以外の人たちと同じような、普通の生活が出来る住宅が基本となります。その上で「地域居住」の考え方を、私なりに規定すると次のようになります。

 【1】物理的に今までの生活圏に入る地域;
     慣れ親しんだ生活圏を離れることがないこと。
     心理的な生活圏を想定することも必要。

 【2】社会と常に交流を持った住まい;
     家族、友人との交流が継続すること。
     地域資源を用いての生活を行なうこと。

 【3】頻回の住まいの変更を伴わない;
     住まいとケアの分離が行なわれること。
     障害が重なるたびに、住まいの変更を強いられること
     がないこと。

 【4】自律した生活を送ることが出来ること;
     他人の指示の元に生活したり、自己決定を保つことが
     出来ない生活ではないこと。

 【5】高齢者が安全と感じたり、安心できる住まいであること;
     緊急時の通報が出来ること。
     住まいの安全性や親しみやすさがあること。

「地域居住」は、自宅を含め、高齢者が地域で暮らすことが出来るようにする考え方です。高専賃は、この様な「地域居住」を実現させる住まいであるべきだと思います。


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◆◆高専協通信 第14号◆◆(メルマガ:高専協通信 第14号 2009年10月14日より)

「地域居住」=aging in place の考えは、この十数年のうちに、大部分の先進国に広がりました。日本においても、介護保険施行当時には、施設から在宅への考えが基本となっていました。 

しかし、概念が明確にならないままに、在宅への掛け声をいくら言っても、結果的には、家族の負担を増すだけで、その結果、施設から在宅への流れは消え、逆に施設の増加を求めるような要望が増えているのです。

この10年間の経過から見れば、介護保険施設を建設すると需要を解消できるのではなく、逆に新規の需要を誘発することの繰り返しでした。特養を建設すると、その地域の需要がなくなるのではなく、逆に特養への待機者の増加を招く結果となっているのです。

これらは、在宅介護機能の量は増えても、質が伴っていないことを表しています。訪問介護やデイサービスが増加しても、それらは家族の介護を前提としている為に、介護負担がいくらかは減少しても、なくなる事は所詮なかったのです。従って、従来型の在宅サービスは、施設への需要を引き下げることはない(つまり、家族の負担はさほど解消していない)のです。

この矛盾を解消するためには、在宅サービスの考え方を大幅に変化させる必要があります。家族の援助がなくても、要介護者が在宅で暮らすことが出来るようなシステムです。

多分在宅にて介護が不可能になる高齢者は、認知症があり行動障害を伴う場合、医療的な処置が常に必要な場合のみとなるでしょう。
これらの高齢者は、要介護者の1割~2割程度に過ぎないと思われます(認知症の人が全員在宅で暮らせないわけではないことに注意)
 
この様な新しい考え方に立った、在宅サービスとして、同時に推進すべきことが、高齢者集合住宅の建設です。何らかの障害を持った高齢者は、自宅か高齢者集合住宅を選択することになり、施設への移動は極めて例外的な場合に留めるべきでしょう。その為にも、在宅サービスの考え方を変える事と、高齢者集合住宅の建設促進は同時に平行して行なわれる必要があります


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◆◆高専協通信 第15号◆◆(メルマガ:高専協通信 第15号 2009年10月27日より)

「地域居住」=aging in place を実現する為に、高専賃は大きな役割を果たすことになります。施設から地域居住への移行を行なうための住まいとしては、

【1】自宅 【2】高齢者集合住宅 【3】地域に開かれた施設 が該当します。

このうち【1】自宅が50% 【2】高齢者集合住宅が25% 【3】地域に開かれた施設が25% 程度となることが目標です。

ちなみに、現在は【1】自宅に暮らす人が約71% 【2】高齢者集合住宅が約6% 【3】施設が約23% となっています。

施設から地域居住への移行に必要なことは、

【1】自宅
 ・緊急時の訪問を行なう体制を作ること
 ・短時間の訪問介護に対する報酬をつけること
 ・介護度3以上の人に対する限度額を引き上げること
 ・食事の提供を積極的に行なうこと
【2】高齢者集合住宅
 ・住まいとして十分な面積・設備を確保すること
 ・賃貸契約であることを明確にすること
 ・短時間の訪問介護に対する報酬をつけること
 ・介護度3以上の人に対する限度額を引き上げること

【3】施設
 ・居住面積が住まいと認められる面積を有すること
 ・施設外との間に、拘束を行なうなどの遮蔽を行なわないこと
 ・カスタムメイドケアの原則で、個人ごとのケアプランを確立すること

自宅へのサービス強化、新規施設の制限・既存施設の改善とともに地域居住の一つの核である、高齢者集合住宅(高専賃)をもっと建設し、施設の代わりを勤めることが出来るように努力したいと思います。


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◆◆高専協通信 第16号◆◆(メルマガ:高専協通信 第16号 2009年11月11日より)

高齢者専用賃貸住宅が、地域居住(aging in place)の中心になるための条件は、住まいと介護(支援)の分離です。障害が強くなっても、住まい(高専賃)で暮らすことが出来ることが前提です。
今回の法改正で述べられている、「サービス付高円賃(高専賃)」が、基礎となります。

もちろん、一部の人たち(認知症の為に他人に迷惑を与える場合、医療行為が常に必要となる場合など)は、それなりの施設(グループホームや医療機関)でのケアが必要です。例えば、病気の場合、多くの人は一般病院で治療を受けるが、一部の人は専門病院(痔の専門、リハビリの専門病院など)で治療を受けることと似ています。

住まいと介護(支援)の分離を行なうためには、介護(支援)のうち、内部で行なうことと、外部から調達することを区別しなければなりません。今回の法改正で決められている、賃貸契約と生活支援サービス契約との分離は、その第一歩です。

生活支援サービスは、介護(支援)のうちで、内部で行なう部分を表しています。「サービス付高円賃(高専賃)」では、賃貸契約と生活支援サービスが別契約であり、同時にセットになっています。

生活支援サービスの契約では、内部で行なう介護(支援)の内容を明確に示さなければなりません。例えば、食事の提供、緊急時の対応、生活上の支援などの項目にそって、それぞれを提供する価格も同時に示さなければなりません。

一方で、日本国の住民には、パブリックサービスとしての、介護保険サービス、医療サービスを受けることが出来る権利があります。この様なパブリックサービスの権利は、家主が左右することは出来ません。外部サービスを家主と同じ人や法人が提供することは自由ですが、自前のサービスを強制したり、あるいは、他の人や法人から提供される(入居者が選ぶ)パブリックサービスを阻止することも出来ません。

従って、住まいと介護(支援)の分離を目指す高専賃(サービス付高円賃)では、介護(支援)の中で、内部で行なうサービス(賃貸契約とセットになっている生活支援サービス)と、外部から提供される介護保険サービス、医療保険サービスとを区別し、外部サービスの場合には、そのアクセスに関しての入居者の選択を確保する考えが必要となります。


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◆◆高専協通信 第17号◆◆(メルマガ:高専協通信 第17号 2009年11月25日より)

地域居住を実現するための「住まいとケアの分離」について、今回の法改正には、どの様に反映されているでしょうか。

平成21年8月19日付け、都道府県知事、政令指定都市、中核市へ向けた、厚生労働省老健局長と国土交通省住宅局長の連名の通達では、その最後に、高齢者円滑入居賃貸住宅(高専賃)のチェックリストが別添で載せられています。

その内容は、大きく3つの項目です。

 【1】賃貸契約である旨が明記されている 
 【2】賃貸借の対象物が明記されている
   ・対象となる専有部分が明確となっている(例:0号室など)
   ・合意なしに居室の変更が出来ない 
 【3】賃貸借の対象物に対する賃料に相当するものが明確である
   ・賃貸借契約含まれるサービスについて過度でないこと

このうち 【1】賃貸契約である旨が明記されている 【2】賃貸借の対象物が明記されている の2つの項目は、高専賃が有料老人ホームなどと異なり、一般の賃貸住宅に属するべきことをあらわしています。

特に、【2】賃貸借の対象物が明記されている の項目は、有料老人ホームなどの利用権契約との違いを明確にしています。
介護の都合によって、居室の移動を行なうことを契約で記載することも不可となっています。これも、「住まいとケアの分離」を行なうための一歩です。

【3】賃貸借の対象物に対する賃料に相当するものが明確であるの項目には、共益費や管理費に含まれる程度のサービス(通常の賃貸住宅で行なわれているサービス)については、賃貸借契約に含めればよいが、その他のサービスについては、別契約としなければならないとされています。別契約とは、生活支援サービス契約の意味です。

生活支援サービスは、当然の事として有料になりますが(固定価格か出来高価格かは別として)、介護保険、医療保険サービスとは分離すべきです。

従って、事業者が行なう契約は、実際には次の3種類となります。

 (1)賃貸住宅の提供(賃貸料、共益費など)
 (2)生活支援サービス
 (3)介護保険、医療保険サービスの提供

上記の3種のうち、サービスをどの程度までを行なうかによって、高専賃の性格が決定されます。

しかし、このうちで、(1)と(2)とは、私的なサービスであり(3)は公的サービスであることを注意してください。なぜなら、(1)(2)は契約する当事者の問題ですが、(3)は公的サービスなので、対象者、価格、サービスの内容について、制限があるからです。つまり「住まいとケアの分離」を行なうためには、(3)の公的サービスへのアクセスが大きな問題となります。


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◆◆高専協通信 第18号◆◆(メルマガ:高専協通信 第18号 2009年12月9日より)

サービス付高円賃(高専賃)において、最も注意すべきは、公的サービス(介護保険・医療保険)の取り扱いです。

つぎの3点に注意して頂きたいと思います。第1には、生活支援サービスと介護保険との関係、第2は介護保険の請求について、第3に介護保険・医療保険への入居者のアクセスの問題です。

第1に、生活支援サービスと介護保険との関係です。入居者に対しての、生活支援サービスは、定額料金で賃貸契約とセットで契約したもの(通常は数万円が多い)と、入居者が利用するごとに料金が発生するサービスとがあります。

介護保険との関係で問題となるのは、入居者が利用するごとに料金が発生する生活支援サービスです。この様な、出来高に応じた生活支援サービスを提供する場合、注意しなければならないのは、介護保険サービスとの間で、サービスの内容、提供時間を明確に分ける必要があることです。

例えば、外出援助の様に、内容、提供する時間ともに、介護保険との間で区別できる場合は問題ないのですが、排泄の援助や食事の援助、あるいは掃除など、介護保険給付と、内容において区別がつけにくいものや、介護保険で1時間のサービスの提供を行なった後、さらに1時間の生活支援サービスを行なうなど、時間的な区別が出来ない場合は問題となります(平成15年 厚労省老健局老人保健課事務連絡)。しかし、提供者が介護保険と生活支援サービスについて同一でも、内容、時間の区別が明確に分離される場合はOKです。

第2の介護保険の請求については、あらかじめ決められたケアスケジュールを守ることが大切です。介護保険は、事前にケアプランを作成し、ケアプランに基づいた介護を提供する仕組みです。

しかし、現時点で介護保険での給付を受けている入居施設では、事前のスケジュール作成があやふやであり、援助が中止されたり、あるいはケアプランの内容にないものを提供することもあり、事前のケアスケジュールが十分に守られていないのが実態です。

家族が大部分のことをやっていて、追加的な援助を行なう自宅への介護サービスと違い、生活全般をカバーするような援助を行なわなければならない高専賃での介護サービスでは、事前のケアスケジュールは、入居者の状態を十分に把握した上で作成しなければならないのです。

ケアプランを作成するケアマネージャーは、施設での経験(スケジュールが守られない)や、在宅での経験(生活全般の援助を行なっていない)だけでは、生活全般をケアプランに沿って援助することが出来ません。事前のケアプランと大幅に異なる援助や、介護者の都合で援助が中止されたり、その反対に、入居者の要求で、簡単に援助を追加するような事態は避けなければなりません。

つまり、入居者の状態を十分に把握した上での、確実性の高い、事前のケアプラン作成の良否が非常に重要となるのです。ただし、事前のケアプラン作成による、スケジュールの決定は、入居者の状態が変化することによっての、ケアスケジュール変更を制限するものではありません。

第3の問題については、次回に述べたいと思います。


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カテゴリ◆◆高専協通信 第19号◆◆(メルマガ:高専協通信 第19号 2009年12月24日より)

前回、公的サービスとの関係で、3つのポイントについて説明しました。3つのポイントとは、第一に、生活支援サービスと介護保険との関係、第二は介護保険の請求について、第三に介護保険・医療保険への入居者のアクセスの問題です。

今回は、第三の介護保険や医療保険に対する入居者のアクセスについて説明したいと思います。

公的保険では、受給資格がある人たちは、無条件に、介護保険や医療保険のサービスを受ける権利を有しています。そして、これらの保険では、サービス提供者への自由なアクセスを保障しています。

つまり、訪問介護事業者のサービスが気に入らない場合には、他の事業者に変えることが出来るし、往診医が不十分なサービスしか提供できない場合には、自由に医師を変えることが出来ます。自由なアクセスは、アメリカやイギリスなどの制度と日本の公的保険制度が大きく異なる点なのです。

サービス付高円賃(高専賃)に入居している高齢者に対しても同様です。入居者が、運営者の決められたサービス事業者のみからサービスを受けるように強制することは出来ません。訪問介護事業者を指定したり、往診医を指定することは出来ないのです。

一方で、自宅と異なり、家族の介護なしに生活をするためには、既存の訪問介護事業所で対応できるかどうかについては、疑問があるかもしれません。多くの訪問介護事業者は、24時間のサービスに対応しているとは言えないし、希望するサービスを提供できるかどうか不明です。しかし、入居者が希望した場合、自由なアクセスを妨害することは出来ません。

さらにもう一つ問題があります。入居の際の条件です。サービス付高円賃(高専賃)は賃貸住宅なので、入居者の状態によって、受け入れるかどうかについては、家主側に選択する権利があります。従って、事業者側の指定する介護事業者との契約を前提として入居契約を行なうことは理論上可能です。しかし、一旦入居した後には、私的な保険や契約とは異なり、公的サービスとしての介護保険、医療保険を選択する権利が発生します。入居の際に、条件として一定の介護事業者を指定することは出来ますが、入居後はこの契約は無効となる意味です。

例えば、入居時に介護事業者を指定しても、1週間後に入居者が他の介護事業者を指定した場合、家主は退去させる権利も、公的保険下での自由なアクセスを妨げる権利もありません。

この事は、微妙な問題です。従って、住まいとケアの分離の観点から望ましいのは、入居時に文書で、公的保険(医療保険や介護保険)サービスについては、事業者の自由な選択を保障する旨の文書を交付し、その上で、いろいろの状況から見て、入居者にとってより良いサービスを薦めることが必要です。もちろん、事業者の薦めるサービスが、入居者にとっても、より良いサービスであるという確信が前提です。


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カテゴリ◆◆高専協通信 第20号◆◆(メルマガ:高専協通信 第20号 2010年1月6日より)

昨年3月に、高専協が発足してから、9ヶ月となります。景気の悪化とともに、社会保障財源の不足する中、政府の方針は、「コンクリートから人へ」と言うように、社会保障重視のように見えます。しかし、財源の問題によって、今後の政策は、大きく変化する可能性もあります。

高齢者に対しての政策を見ると、従来型の保護政策が相変わらず継続され、高齢者の自立と自己決定に基づいた、新しい考え方を基にした政策が行なわれる気配はあまり感じられません。

この様な環境でも、高専賃は、諸外国と同様に「施設から住宅へ」の社会保障改革の柱の一つになりうるような、大きな要素を含んでいます。

さて、高専協も本年度から、皆さんに2万円の会費を頂くようになるのですが、皆さんにとって、高専協に加入して良かったといわれるように、次のことがらを、重点的に進めて行き、皆さんのご期待に答えたいと思います。

【1】情報の提供
最近では、行政からの情報は、ネット経由にて、比較的容易に入手することが出来るようになりました。しかし、未だに、明確な指針を出すことについて、行政は積極的ではありません。高専協は、中央官庁の担当者に直接働きかけ、正確な情報を聴取して、皆さんに提供していきたいと思います。

【2】相談窓口の役割
昨年度も、いくつかの問題について、高専協から、中央及び地方の行政当局に働きかけました。個別の企業や団体が、行政当局の意向に対して反対することは難しいのが現状です。高専協はこの様な場合、会員の皆さんからの要望をお聞きし、事業者団体として、地方の行政当局との交渉を行います。会員の皆さんは、気軽に高専協事務局に対して、相談を行って頂きたいと思います。

【3】高専賃の認知促進とホームページを通しての相互交流の促進
今年度から、ホームページに、会員の名簿を公開する予定です。また、高専賃自体の認知、啓蒙活動を行っていきます。その他、ホームページを通じて、相互交流が出来るように努力していきたいと思います。

【4】経営ノウハウの提供
高専賃の運営について、そのノウハウを提供していきたいと思います。高専賃の運営についての講演会を開催して、会員の皆さんには割安の料金で参加出来るようにしたいと思います。また、個別の相談にも応じていきたいと思います。

【5】品質の評価
高専賃に対して、一定の基準を設定し、住居としての品質や介護の品質を評価していきたいと思います。


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カテゴリ◆◆高専協通信 第21号◆◆(メルマガ:高専協通信 第21号 2010年1月20日より)

1月も中旬となりました。高専協も、本格的な活動を再開しています。高専賃は、本年5月19日までに、登録の更新を行う必要があります。会員の皆さんも、登録の更新をよろしくお願い致します。ご不明なことがありましたら(地方自治体の窓口では、準備が十分整っているとは言えないので)、高専協事務局まで、何なりとご相談ください。

さて、今回は、日本の住宅行政から考えた、高齢者住宅の今後についてのあるべき姿について考えてみたいと思います。

「aging in place」=「地域居住」の考え方が基本となります。
Aging in place の考え方は、できるだけ同じ地域(あるいは同じ住宅)で、かつ、社会との関係を保った状態で生活を続けることです。この考え方から導かれるのは、以下のポイントになります。

 
【1】障害に応じた施設を作る発想から、住まいに対する援助の考え方に転換すること。
戦前と異なり、社会保障と住宅政策が別の部署(厚生省と建設省)で行われてきたために、政策の整合性が乏しくなっています。しかし、今回の法律(高齢者居住法)改正で、部分的にでも、国土交通省と厚生労働省が協力する体制ができたことは評価することが出来ます。

【2】健康で文化的な生活を営むに足りる住まい(憲法25条)を基準とすること。
高齢者施設の現状を追認した場合、貧弱な住まいとなるが、健康で文化的な生活はどこにあるかを考えると、現在以上の基準を設定しそれに向かって努力する必要があると思われます。現状の、貧弱な住まいを追認するのでありません。

【3】どの程度の住宅が上記の基準に適合するのかを検討すること
2006年の、住生活基本計画では、高齢者の単身住宅の最低基準を25㎡としています。しかし、「ホーム=住宅」とは言いながらたとえば認知症対応施設(グループホーム)は、わずか7.5㎡の広さで、多くの特別養護老人ホームは、いまだ多人数部屋である現状を改善すべきでしょう。

【4】障害に対する施設の基準から、収入、資産に応じた、住まいを獲得するための個別保障に切り替えること。
どうしても、この様な個別保障政策を行うためには、個人の所得の把握が出来るような、税金、社会保障などを一元化したデータベースが必要となります。そして、個別の住宅に対する家賃保証を行うことができれば、類型別の施設や住宅(特養、ケアハウス、有料老人ホーム、高専賃など)を造る必要はなくなります。例外として、高度の認知症を有する人たち、つねに医療的なケアを要する場合の為の施設は残るでしょう。そして、これらの人たちに対しては、現在よりもケアの質、量を充実させなければなりません。概算で40万人程度(現在の施設は80万人台)が必要になると考えられます。

高専賃に対して、一定の基準を設定し、住居としての品質や介護の品質を評価していきたいと思います。


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カテゴリ◆◆高専協通信 第22号◆◆(メルマガ:高専協通信 第22号 2010年2月3日より)

Aging in place(地域居住) の考え方が浸透するに従って、各国で問題になったのは、福祉政策と住宅政策が別々に行われていたことです。

住宅政策が社会保障の根幹であると位置づけると、両者が共同して政策に当たる必要があります。高齢者対策においても、医療介護を担当する福祉部局と、高齢者住宅を担当する住宅部局との間で、別々の施策が行われていました。最近になり、aging in placeの考えが理解されるにつれて、多くの国で、両者が協調した対策が行われるようになってきました。

アメリカにおいても、HUD(住宅土地開発省)と、HHS(保健社会福祉省)との間において、2000年頃から協力体制が整って大きな成果を上げているようです。

日本の現状をみると、2001年の第8期住宅建設5カ年計画において、中高年単身所帯(つまり独居している高齢者について)の最低居住水準面積を25㎡(その他は18㎡)とし、2006年の住生活基本計画においても同様に、最低居住水準面積を25㎡と決められた(今度はすべての単身所帯について)にも関わらず、福祉的アプローチでは、それらよりもはるかに低い水準で、居住面積が定められています(福祉施設では7.5㎡や13㎡、特定施設でも18㎡)。

今回の高齢者居住法の改正で、厚生労働省と国土交通省が共同で、高齢者住宅の対策に当たるようになったのは、小さな進歩でしょうが、諸外国の対策に比べて、貧弱な感は否めません。

日本においては、上述の福祉政策と住宅政策のアンバランスと同時に、高齢者の意向が反映されない現状があります。調査(2002年の健康保険組合連合会)によると、高齢者施設に入居を決定したのは、75%が家族であり、6%がケアマネージャーで、本人が決定しものは14%にすぎないという事実があります。

どの様な施設や住宅に移動するかは(あるいは移動しないかは)高齢者本人が決定するのが当然であり、そうすることによって、移動の後に多く起こる、喪失感や依存性の増大を解消することが出来ます(施設において入居者の行動障害の多くは移動の問題に関係しています)。

また、移動をしようとした理由で最も多いのは、「家族に迷惑をかけたくないから」が圧倒的に第一位となっています(内閣府2004年調査)。

この様な現状で、国の想定した最低基準の住まいが、高齢者に提供されていないこと、あるいは、高齢者(特に障害を持つ高齢者)の意向を聞かないで、政策が行われていることは、かつての障害者に対する政策と同様、かえって住まいを移動した高齢者の喪失感や依存性を高め、その結果として、財政的にも医療や介護に多大な費用を要することになるのではないでしょうか。

高専賃に対して、一定の基準を設定し、住居としての品質や介護の品質を評価していきたいと思います。


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カテゴリ◆◆高専協通信 第23号◆◆(メルマガ:高専協通信 第23号 2010年2月17日より)

前回は、高齢者に対する住宅政策と福祉政策の統合についてお話ししました。諸外国において、2000年頃から本格的に、この二つの政策の統合が試みられているのですが、日本でも、今回の「高齢者居住法」の改正がその契機になればと思います。

前回お知らせしたように、2001年の第8期住宅建設5カ年計画において、中高年単身所帯(つまり独居している高齢者について)の最低居住水準面積が25㎡とされました。介護福祉分野でも、介護保険の導入以来、従来の特別養護老人ホームのなどの6人室、4人室のような、とても住まいとは言えない環境を改善するために、個室の導入が進められてきました。さらに、有料老人ホームの普及によって、最低居室面積が多くの施設で18㎡に引き上げられて来たのです。

高専賃の普及は、この様な居住環境の向上に、さらに大きな弾みをつけるものでした。しかし、最近居住環境の向上に反するような政策が取られようとしています。

厚労省は今月、「都市型軽費老人ホーム」の概要を示しました。この「都市型軽費老人ホーム」の対象は大都市部の既成市街地に限られますが、この基準改正案によると、居室面積は、7.43㎡以上となっていて、従来の軽費老人ホームの基準(21.6㎡)より大幅に低下しています。この改正は、群馬県で起こった「たまゆら」の事故が大きく反映していると思われます。

この施設が、生活保護受給者などの低所得者を対象とした収容型施設になるとすれば、低所得者を区別するような公的政策であり、さらには国の最低居住基準を引き下げる結果ともなります。そして、もし低所得者に限定したものでなければ、所得から言えば最低基準以上の住まいで暮らせる人達が、家族やその他の意向によって、住まいとは言えない、この様な施設で暮らすことになる可能性もあります。

せっかく最低基準の住宅案を示し、それに向かって努力する(最低基準とは国民全体の基準という意味ですから)ことを示し、福祉政策と住宅政策の整合性を掲げたにも関わらず、今回のような政策は、これに反するものとなります。福祉政策と住宅政策の統合を図るとすれば、最低基準面積を維持しつつ、足りない部分に対しては公的資金を使う政策になるでしょう。

しかし、ここで問題もあります。もし、日本がこの様な住宅政策をもはや行うだけの力がないとすれば、将来は悲観的になります。一部の地域においては、特別養護老人ホームの個室化政策を変換して、従来の多人数室に戻すような動きもあります。住宅・福祉政策は一時的な政策に終わらず、長期的な視点から作る上げる必要があるとおもいますが、現実に公共投資に回すことが出来る資金が、もはや日本に少ないとすれば、今まで積み上げてきた、社会保障政策の根幹である、住宅政策を大きく後退させることになるでしょう。

政策は、ideal(理念)とreality(現実)の双方に目を配って実行しなければなりません。現実に合わせようとすれば、理念に反することとなり、理念を優先すると、現実と乖離した政策となります。理念を横目に見ながら、現実に対応することが政策の基本とすれば、今回の「都市型軽費老人ホーム」の政策は、現在まで積み上げてきた実績を押し流す可能性がある、理念を放棄した政策となるのではないでしょうか。


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テゴリ◆◆高専協通信 第24号◆◆(メルマガ:高専協通信 第24号 2010年3月3日より)

本日(3月3日)の日経の1面に、「都市型軽費老人ホーム」ついての記事が掲載されました。詳細は、前回のメールマガジンでお伝えしたとおりですが、指摘したような問題点が認識されているかどうか、あるいは、とりあえずの場当たり的な政策になっていないかどうか検証する必要があります(問題となる点は前回のメールマガジンをご参照ください)。

さて、高専賃の目的は、今まで行われてこなかった、住宅政策と福祉政策の統合にあります。そして、そのツールとして、日本で幸いにも施行されている、介護保険を用いることにあります(介護保険がない場合は、制度を新しく作らなければなりません)。

現在高専賃を運営しているのは、住宅を専門としていた事業者と介護・医療を専門としていた事業者が混在し、従来の高齢者住宅(不動産系会社のみ)や福祉施設(介護医療事業者のみ)の構成と大きく異なっています。実際、高専賃の制度を作った意味(住宅政策と福祉政策の統合)は、この点では実現されていると思われます。その上で、さらに住宅政策と福祉政策との有機的統合を進めなければなりません。

現状の問題は、次のような点にあります。住宅を専門としていた事業者にとって、賃貸住宅は今までの事業と同様であり、入口には問題はありません。しかし、入居者が障害を抱えている人となると、制度自体が複雑な介護保険、医療保険を上手に運用しているとは言えません。つまり、介護の必要な人を敬遠する傾向があります。これに対して、介護・医療を専門としていた事業者は、入口の賃貸住宅の意味を理解することに対して戸惑いを感じています。その結果として、賃貸住宅が施設のように運営されることになります。

高専賃は、住宅政策と福祉政策を融合させるための有力な方策ですから、双方の利点を吸収し、その上で新しい運営方法を確立しなければなりません。その為には、入口である賃貸住宅の考えを理解したうえで、介護保険をどのようにうまく使うのかにかかっています。介護保険の上手な使用は、介護保険がもともと持っている、居宅支援機能を引き出すことにあります。

介護保険は居宅サービスを充実させることが目的でしたが、施行以来10年間、居宅(自宅)に対するサービス提供の能力が向上しているとは言えません。その理由は、現状の居宅サービスでは、すべてが断片的なサービスに終わり、高齢者自身を全体としてケアする方法を確立してこなかった、もしくは、最初から社会的に支えることを放棄して、家族の参加を前提としていたからでしょう。

居宅サービスを支えるためのケアプランは、介護度が高まるにつれて、機能不全に陥っているのです。その結果として、施設需要を増やし、施設の不足を加速しています。高専賃は施設の補充でなく、あくまでも居宅(自宅)生活を続ける一部分として位置づけられる必要があります。つまり、居宅(決して施設ではない)に対して、介護保険がどの程度機能するのか、あるいは、本当に介護保険を使って自宅に一人で生活出来るのかを問われていて、その実現の舞台として、高専賃が選ばれていると考えてもよいと思います。

居宅生活を支える場合、集合住宅はその第一歩として、マネージメント(ケアプラン)が各自宅に対するより簡単です(距離的な問題)。高専賃への居宅サービスを行うためのマネージメント(ケアプラン)を進化させることによって、居宅(自宅)に住み続たい障害を持つ高齢者に対する居宅サービスの技法は進化することになります。


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カテゴリ◆◆高専協通信 第25号◆◆(メルマガ:高専協通信 第25号 2010年3月17日より)

高専賃への居宅サービスを行うためのマネージメント(ケアプラン)を進化させることによって、居宅(自宅)に住み続けたい障害を持つ高齢者に対する居宅サービスの技法は向上することになります。つまり、高専賃に対するケアマネージメントが進化し、介護が必要な高齢者に対して、必要な援助を提供することが介護保険の枠内で実現できれば、その先にある、一人暮らしの高齢者に対して、同様の必要な援助を介護保険で行うことが出来ることになります。

2段階のハードルを想定しなければなりません。第一は、施設での援助と、高専賃での援助との違いを乗り越えること、第二はさらに、高専賃という集合住宅での援助と、集合住宅ではない一人暮らしの高齢者との援助の違いをどの様に乗り越えるのかという点です。

第一の視点である、施設と、自宅である高齢者集合住宅との違いを乗り越えるような方法はあるのでしょうか。

答えはあると思います。まず入居に際しての契約は、賃貸借契約であることです。自宅と同様の仕組みを確保することは、そこに働く職員の意識を変えることが出来ます。非常に簡単なことですが、入居者の承諾がないと居室に入ることはできません。居室のカギは、入居者の管理となりますから、入室には当然許可が必要となるし、施設でよく発生する盗難の危険も低下します。そして、その反対に入居者の責任も発生し、外出する際には鍵をかけるとか、戸締りを行うなどの基本的な事柄を、責任をもって行わなければなりません。

施設において多くの場合、入居前の説明が十分でなく、その上、説明は家族に対してなされる場合が多いのです。つまり、直接の入居者である高齢者は、入居の際の契約や、あるいはいろいろの事項に対して関わり合いが薄いのが実情です。

その結果、入居者は依存的になり、何か問題があると、施設職員と入居者との間で直接交渉がなされず、家族が媒介したり、時には、施設職員と入居者との合意に家族が反対する場面も出てきます。入居者との直接交渉がなされないと、入居者はつねに家族に対して不満をのべ家族は施設に対して不満を述べるようになります(あるいは不満を述べず我慢する―公的施設に多い)。多くの問題が、当事者(高齢者)を交渉の場から遠ざけている結果として生じる場合も多いのです。

従って、高齢者が自分の住まいに対しての一定の責任を持つことなど、交渉の当事者として認めることが高専賃を運営していく際に大切となります。高齢者に対する交渉は、賃貸借契約を手始めとして、生活支援サービスについての契約、さらには、介護保険サービスの提供方法などについての交渉も必要となります。

一般に高齢者を虚弱で何もできない人たちと考えている場合には、この様なやり方が出来ません。反対に、交渉を行うことができない人、例えば、自分で何もしようとせず、家族にすべて委ねる人あるいは認知症が進行した場合に見られるように、交渉が不可能な人の場合、高専賃への入居が難しいと言えると思います(しかし、この事は、介護度が高いことや、認知症の人すべてを意味するものではありません)。


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カテゴリ◆◆高専協通信 第26号◆◆(メルマガ:高専協通信 第26号 2010年3月31日より)

高専賃が今後成長していくためには、自宅に代わる住まいとして2段階のハードルを想定しなければなりません。第一は、施設での援助と、高専賃での援助との違いを明確にすること、第二はさらに、高専賃という集合住宅での援助と、集合住宅ではない一人暮らしの高齢者との援助を一致させることです。

第一の視点である、施設と、自宅である高齢者集合住宅との違いを乗り越えるような方法について、前回は、賃貸借契約の問題を主として取り上げました。もう一つの要点としては、外部サービスを使用することです。高専賃で行う定額の生活支援サービスは賃貸契約と連動していて、このサービスは、高専賃が施設的になりやすい要因となっています。

施設との違いを明らかにするためには、生活支援サービスの範囲を限定的に考え、外部サービスの使用を拡大しなければなりません(生活支援サービスの範囲が拡大すれば、入居者の費用負担も増加します)。そして、外部サービスを使用することが、高専賃と老人ホームとの差異を明らかにして、「住まいとケアの分離」を実現する大きな力となります。

日本では、幸いに、誰でもすぐに使えるサービスとしての介護保険があります。介護保険の魅力は、自宅で暮らす人に対して迅速に、容易に、ケアを提供することにあります。高専賃では、日本に独自に存在する、介護保険を上手に使うことが最も重要で、高齢者集合住宅を拡大するエネルギーとなるのです。

その場合、重要な点は、どの事業者の介護保険サービスを使用するかについては、制限することは出来ないことです。自前の訪問介護サービスを持っている高専賃事業者でも、入居者が他の事業者のサービスを利用することを妨げられないのです。自由な介護保険サービスの選択については、入居時に一定の文書で示す必要があります。

外部サービスを利用してのケアと、施設的に行うケアとの間では大きな差異が二つあります。第一は、スケジュール化されていること、第二は、高齢者の自立性がはっきりしていること、つまり利用するかどうかについて利用者の意思が明確であることです。

第一のスケジュール化では、ケアマネージメントの技術が重要です。高齢者個々の身体、精神状態に応じたケアの提供、必要十分なケアの提供(つまり、多すぎもなく、少ないこともない)を行うようなプランを作ることが出来るかどうかです。身体状況や精神状態の的確な把握が行われ、さらに、高齢者本人(家族は付属的)との交渉がなされているかによって、必要十分なケアプランを立てることが出来ます。

第二の高齢者の自立性についてはつぎのようになります。訪問ケアを行っている時には、高齢者宅に上がりこむことになりますがその他は、不必要な干渉を行わないことです。具体的には、介護記録は高齢者の手元にあり、薬も高齢者自身が所持し、いろいろの交渉は高齢者本人と行うことになります(しかし支援は行います)。

今までの、家族中心の交渉から、高齢者本人との交渉に移行する場合、説明の手間や、時々変更をしなければならないなど、一見手間がかかるように感じますが、長い目で見ると、高齢者自身の積極的な気持ちを引き出すことに大きな効果があります。


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カテゴリ◆◆高専協通信 第27号◆◆(メルマガ:高専協通信 第27号 2010年4月14日より)

前回に引き続き、「施設での援助と、高専賃での援助との違いを明確にすること」、について述べたいと思います。

外部サービスが重要なのですが、外部サービスの主体は、介護保険サービスです。介護保険をいかに上手に使いこなすかが、高専賃でのケアを行う上での要点となります。

前回は、①スケジュール化 ②高齢者の自立(自己決定)について、簡単に述べました。

介護保険は、限度額を設定しています。施設での限度額は通常介護度1~5と移行する際に、1段階上がると2万円程度増額です。つまり、介護度1と介護度5の違いは、大まかには、8万円程度となります。居宅の場合は、この差が20万円程度となり、大幅に差がつきます。

この事は、施設では、介護度の低い人と高い人との介護時間の差は、居宅ほど大きくないことを意味しています(一部負担を平均化するための政策的な部分もありますが)。施設では、入居者が平均的に扱われ、居宅では、実介護時間に比例していることを意味しているとも言えます。

私たちが、高専賃で実際に居宅サービスを行う場合、介護度1~2の場合には、さほど援助を必要としません。なぜかと言えば、自宅で暮らす高齢者のなかで、介護度が軽い場合(要支援~介護度2程度の場合)、必要な援助は、食事に関するもの、入浴に関連するもの、そして掃除洗濯などだからです。

食事に関する援助は、食事をとるだけでなく、その準備が必要です。入浴もただ湯につかるだけでなく準備と後始末が必要です。自宅での生活においてこの様な日常生活行動は、高専賃のような集合住宅の場合、比較的簡単に提供することが出来るからです。その結果、介護度1~2の人たちに対する、介護保険の使用は、自宅に暮らすよりもかえって少なくなります(つまりある程度のインフラがあれば、生活が自立するということです)。

これは、非常に重要な点であり、高齢者の自立と介護保険の運用双方に有益なことです。

日本の所帯構成者の数が低下して現在2.4人程度になり、同時に高齢者単独所帯(高齢者のみで構成される所帯)が、高齢者のいる所帯の50%を超えている現実、つまり、多くの高齢者は高齢者だけで生活していること、さらには、高齢者独居所帯(一人暮らし)が、高齢者全体の所帯の25%に近付いている現実をみると、生活のためのインフラが整備された集合住宅では、多くの高齢者が援助を必要としないですむことを意味しているのです。

話は変わりますが、最近、単身赴任の人たちのための、賄い付きのアパートが人気になっています。また、共同作業(食事や洗濯など)を前提とした、数人が住宅をシェアする動きも広まっています。これらの考え方は、高専賃と基本的には同じです。

一方で介護度3以上の人たちは、移動や排せつの援助を必要とします。この場合、施設的な包括ケア(非定時介護を含む)が必要とされるのですが、実は、多くの高齢者は自分で判断することが出来るのであり、包括的なケアでなく、スケジュール化されたケア(定時介護)を受け入れ、自分のプライバシーを保つことが出来るのです。スケジュール化されたケアは、移動と排泄のケアが必要となった高齢者に対して、施設的な包括ケアと別れる手段となります。

その為には、高齢者の心身状態を把握し、必要かつ十分な援助を提供するようなプランが必要となります。


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カテゴリ◆◆高専協通信 第28号◆◆(メルマガ:高専協通信 第28号 2010年4月28日より)

前回までのお話を読んでいただくと、高齢者のケアにおいて何が重要であるか理解していただけると思いますが、再度要約すると次のようになります。

高齢者集合住宅(高専賃など)は、要支援~要介護2程度の人が必要とする(単身所帯では困難である)、食事の提供、入浴の援助、掃除洗濯などについて、高齢者住宅のもつインフラ(集合住宅の機能)によって、援助を必要としないで、高齢者の自立を促すことが出来ます。

これに対して、要介護3以上の高齢者場合は、通常施設ケアの対象となりがちですが、同じ住まいで年を重ねる(aging in place)の考え方からは、施設へ移動せず、同じ住まい(高専賃)で暮らすことを可能としなければなりません(移動に伴う外傷体験―トランスファートラウマはかなり問題となるのです)。

その為には、高齢者の障害に対する分析や、精神的な状態を理解する努力をして、それをもとに、高齢者自身と話し合いを行うことによって、「定時的な介護」を提供することが出来ます。その結果、高専賃で要介護度5までの人に対処出来るのです。

しかし、要介護3以上の高齢者の場合、現在の状態に対しての精密なアセスメントが必要であり、「定時介護」をうまく行うためには、ケアマネージャーの能力が求められます。現状での一般的なケアマネージャーは、その様な障害を持つ高齢者に対して、生活全体を考えて、高齢者の能力を理解し、「定時介護」を行うようなケアプランを作る能力は乏しいと考えられます。

従って、ケアマネージャーに対する研修を行い、能力向上を図る必要があります。そうすれば、インフラの整った、高齢者集合住宅で、介護度が高くなっても、暮らすことが出来るのです。

つまり、高専賃は、

要支援~要介護2程度の人には、インフラの活用(高齢者集合住宅ならではの設備など)によって、自立した生活を行う機能をそれ自体が有していて、

さらに、

要介護3以上の人たちに対しては、現状の障害に対する分析と、高齢者本人との話し合いによって、施設でなく、自宅に近い環境で、年を重ねることを可能にするような住まいなのです。

高専賃を現在の介護施設以上の存在とするためには、要介護3以上の人たちに対して、高齢者の意向を取り入れ、介護保険を使うことが出来るようにならなければならないのです。

エイジズム(老人差別)とは、高齢者を一人前の人間として扱わない意味です。将来にどの様な運命が待っているにしろ、自分自身で将来の行動を決めることが、人間としての宿命であり、自分自身で決めることが出来ること自体が、一人の人間として自由であり、尊重されているしるしです。

高齢と障害は、いずれも差別を受ける大きな要因です。二つの要素をあわせもった要介護度の重い人が、個人的な意向を無視されることは容易に想像が出来ます。

新しい高齢者住宅の考え方の基本は、エイジズムを排し、一人の人間としての権利と義務を、それぞれ一人の独立した人間として、お互いに再確認することから始める必要があるのではないでしょうか。


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(メルマガ:高専協通信 第29号 2010年5月12日より)

前回までのお話を読んでいただくと、高齢者のケアにおいて何が重要であるか理解していただけると思いますが、

再度要約すると次のようになります。

高齢者集合住宅(高専賃など)は、要支援~要介護2程度の人が必要とする(単身所帯では困難である)、食事の提供、入浴の援助、掃除洗濯などについて、
高齢者住宅のもつインフラ(集合住宅の機能)によって、援助を必要としないで、高齢者の自立を促すことが出来ます。

これに対して、要介護3以上の高齢者場合は、通常施設ケアの対象となりがちですが、

同じ住まいで年を重ねる(aging in place) の考え方からは、施設へ移動せず、同じ住まい(高専賃)で暮らすことを可能としなければなりません(移動に伴う外傷体験―トランスファートラウマはかなり問題となるのです)。

その為には、高齢者の障害に対する分析や、精神的な状態を理解する努力をして、それをもとに、高齢者自身と話し合いを行うことによって、定時的な介護」を提供することが出来ます。

その結果、高専賃で要介護度5までの人に対処出来るのです。

しかし、要介護3以上の高齢者の場合、現在の状態に対しての精密なアセスメントが必要であり、「定時介護」をうまく行うためには、ケアマネージャーの能力が求められます。

現状での一般的なケアマネージャーは、その様な障害を持つ高齢者に対して、生活全体を考えて、高齢者の能力を理解し、「定時介護」を行うよ うなケアプランを作る能力は乏しいと考えられます。

従って、ケアマネージャーに対する研修を行い、能力向上を図る必要があります。そうすれば、インフラの整った、高齢者集合住宅で、介護度が高くなっても、暮らすことが出来るのです。

つまり、高専賃は、

要支援~要介護2程度の人には、インフラの活用(高齢者集合住宅ならではの設備など)によって、自立した生活を行う機能をそれ自体が有していて、

さらに、要介護3以上の人たちに対しては、現状の障害に対する分析と、高齢者本人との話し合いによって、施設でなく、自宅に近い環境で、年を重ねることを可能にするような住まいなのです。

高専賃を現在の介護施設以上の存在とするためには、要介護3以上の人たちに対して、高齢者の意向を取り入れ、介護保険を使うことが出来るようにならなければならないのです。

エイジズム(老人差別)とは、高齢者を一人前の人間として扱わない意味です。将来にどの様な運命が待っているにしろ、自分自身で将来の行動を決めることが、人間としての宿命であり、自分自身で決めることが出来ること自体が、一人の人間として自由であり、尊重されているしるしです。

高齢と障害は、いずれも差別を受ける大きな要因です。二つの要素をあわせもった要介護度の重い人が、個人的な意向を無視されることは容易に想像が出来ます。

新しい高齢者住宅の考え方の基本は、エイジズムを排し、一人の人間としての権利と義務を、それぞれ一人の独立した人間として、お互いに再確認することから始める必要があるのではないでしょうか。


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カテゴリ◆◆高専協通信 第30号◆◆(メルマガ:高専協通信 第30号 2010年5月26日より)

高齢者居住法の改正に伴う再登録の手続きは、昨年11月19日よりはじまり、本年5月19日を持って、新しい基準に切り替わります。

今回の改正は、規制強化と受け取られるかも知れませんが、今までの高専賃は、基準がないために、利用者にとって分かりにくいものでした。

事業者にとっても、今回の改正で、一定の基準が設定されることによって、利用者からの理解が得られ、事業を促進するためにも、必要な規制であると思います。

未だ手続きをおこなっていない会員事業者の皆さんは、早急に都道府県担当窓口へ登録をお願いいたします。

しかし、4月末時点で、高専賃として旧登録されていた建物は1689か所ありますが、このうちで、最低住戸面積が18㎡以下のもの305ヵ所を除き、それ以外の1384か所(82%)が基準を上回っている状態ですが
(ただし最低住戸面積が18㎡以下でもそれ以上の住戸があれば、その部分のみを登録することも出来ます)、
現在(5月26日現在)での登録は770ヵ所で登録が0の県が6県ある状態です。

この理由は、

 (1)事務作業の遅れ
 (2)国交省基準から県独自でさらに上乗せした基準のため
 (3)契約書等の確認作業のため

などが考えられます。

新規登録は早急に行うべきであると考えますが、新規登録に関して、会員の皆さんにおいて、何らかの問題が発生した場合には、遠慮なく、高専協事務局までご連絡頂きたいと思います。

出来る限りのご相談、ご支援を致したいと思います。

さて、前回のお便りで、福祉の町づくりの困難性についてご説明しました。その理由は、乗数効果が低いこと、経費の増大を招くことなどでした。

その反対が住宅建設です。住宅建設は、すそ野が広く、景気対策としては最も乗数効果が高いのです。しかし、今まで安易に景気対策に使われることが多く、国民に対して、住宅建設をあおるような側面もありました。そして、住宅建設=持家の促進となり、良質の賃貸住宅の建設が大幅に遅れてしまったのが現実です。

しかし、高齢者集合住宅(高専賃)の建設は、将来の社会的インフラの整備と同時に、目の前の景気対策にも貢献する点で、最も求められる政策であると考えられます。

景気刺激策や、地域の活性化を、介護で行うことは不可能ですが住宅というインフラ整備をもとにした地域の再構築は可能であり同時に、全国規模でみても、景気刺激としての政策でもあると思います。

この場合の国の役割とすれば、通常の住宅政策で使われる低利融資も考えられますが、それ以上に、高専賃の買い取り機構を作りそれを活用することが有効であると考えられます。
 
高専賃の買い取りとは、既存の高専賃を買い取り、新規の(2カ所目、3カ所目)に対する資金を供給することです。事業者は買い取り機構から、新たに賃貸を受けることになります。それによって、既存の事業者が新たな事業拡大を図ることが出来るようになるのです。


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カテゴリ◆◆高専協通信 第31号◆◆(メルマガ:高専協通信 第31号 2010年6月9日より)

少し古い話になりますが、福田康夫内閣で、社会保障政策を広く討議する有識者会議が、2008年1月25日設置され、2008年11月最終報告が取りまとめられました。

もっとも、最終報告の時には、福田内閣は退陣していました。

この報告は、社会保障国民会議と呼ばれ、雇用、年金、医療、介護など社会保障の幅広い分野に対して2025年を想定した、各種のシミュレーションを行っています。

現在の民主党内閣では、社会保障の問題に対して、将来的な戦略と呼べるものはいまだ発表されていません。

従って、現在の議論の基となっている多くの資料は、約1.5年前の社会保障国民会議の資料をもとにしている場合が多いのです。

この中で、介護の部分についての報告を見ると、依然として過去の古い考えから抜け出ていないことが分かります。

社会保障国民会議の2025年のシミュレーションでは、

特養42万→76万(いずれも現在→2025年)、
老健42万→70万、
居住系(有料老人ホーム+認知症グループホーム)25万→68万

と想定され
(穏やかな改革の場合…さらに進んだ改革でもそれほど差はない)、

介護費用が7兆円→23兆円に増加するとされています。

この内容で分かるように、相変わらず障害をもった高齢者の主たる受けざらは高齢者施設、特に特養、老健を中心とした施設であるとの考えが変わっていません。

高齢者の自己決定、尊厳などを尊重する場合、高齢者が居住する自宅に対する支援を十分に行うこと、そして、高齢者集合賃貸住宅(高齢者集合施設でないことに注意)を整備して、自宅の補完を行うこと(施設の補完でないことにも注意)についての理解が乏しいことが大きな欠点です。

この意味で、高専賃は、自宅の補完としての意味を持たせることが必要であり、それによって、施設においてよく発生する高齢者の依存性をなくして、年をとっても自分の人生は自分で選ぶことを可能にするのです。

本年5月19日より、生活支援サービス付きの「高円賃」=高専賃に登録制度がつくられることは、前回皆さんにお知らせしたとおりです。

これによると、各事業者が運営する住宅の状況を把握し、サービスの質を高めることが目的であり、入居者と事業者への融資制度も拡充します。

2020年に有料老人ホームなどを含め100万戸超を目指すとされています。

また、登録した事業者には、住宅金融支援機構による融資を拡充されます。収益性の低さから民間融資が受けにくいケースが多いためです。

この100万戸は、有料老人ホームも含めていますが、有料老人ホームと高専賃では、明確に契約形態、居住形態が異なるのですから、

私は、高専賃100万戸計画 を提唱したいと思います。

諸外国と同様、施設から住宅への移行を進めて(脱施設化)、それでも自宅に居住することが困難となった人に対して、単純に施設への入居を勧めるのでなく、自宅と同様の住まいへの転居(高専賃など)を勧める必要があり、

その為には、高専賃100万戸が2025年までに必要 となると思います。


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(メルマガ:高専協通信 第32号 2010年6月23日より)
本年11月24日(水)、高専協主催で「高齢者集合住宅研究大会」を行うことになりました。初回のテーマは、「高齢者集合住宅におけるケア」です。

高専賃を運営されている会員の皆さんは、実感として感じられていることと思いますが、サービス付き高円賃(高専賃)の入れ物は、本年5月19日より、新しい法令のもとに、従来の施設―在宅の枠を超えた、新しい形態として出発していますが、高専賃に対するケアの方法については、なんら政府からの指針は示されていません。

高齢者集合住宅に対するケアの提供は、ケアプランを基にして、 しっかりとした計画に基づくケアが必要となります。ケアの提供は、生活支援サービスとして入居者から徴収する部分と、介護保険を用いる公的サービスを導入する部分、さらには、同じく公的サービスである、医療保険を用いる部分もあります。さらには、在宅生活と同様に、インフォーマルケア、つまり家族や友人が行うものも含まれます。

これら高齢者集合住宅に対する介護の提供において、中心になると期待される介護保険サービスは、今まで自宅に対するサービスと、施設に対するサービスとに分離されていました。従って、自宅と施設の中間的な形態である(しかし決して施設ではない)、高齢者集合住宅に対する介護保険サービスついては、未だ制度的にも、制度の運用面においても、明確な指針が示されず、暗中模索の状態です。

私たちは、高齢者集合住宅に対して、日本独自のシステムである介護保険を用いてのケアの提供について、制度的な問題と、運用面の問題について、積極的な議論を行い、制度の改善を図るとともに、制度の運用についても、多くの知見を得たいと思います。
 
介護保険の導入については、生活支援サービスとの関係も大切な点となります。介護保険と有料サービスの振り分けは、よく議論となるところですが、高齢者集合住宅においては、その振り分けを明確に行うことも大切なことです。

さらに、高齢者は身体的な疾患が生活に占める部分が大きいことを考えると、医療が入居者に対してどの様に提供されるのか、あるいは、介護施設への医療の提供、自宅への医療の提供、高専賃への医療の提供が異なるのかどうかについても議論が必要であると思います。

これらの点について、高齢者集合住宅研究大会においては、行政の方々、学者あるいは有識者の方、そして、実際にケアを行っている現場の方々にも発表を行なって頂き、今後の高齢者集合住宅に対するケアの在り方について、一石を投じるとともに、現場でケアを行っている方々の大きな参考となる場にしたいと思います。

会員の皆様方の積極的なご参加をお願いする次第です。同時に、現場での実践について、研究発表をお願いいたします。


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カテゴリ◆◆高専協通信 第33号◆◆(メルマガ:高専協通信 第33号 2010年7月7日より)

2025年までに、高齢者ケアで先行している(倫理性、効率性において)諸外国と並ぶためには、高齢者集合賃貸住宅を100万戸 程度作る必要があります(年間平均6万戸程度)。

一般賃貸住宅の年間着工数は、年によって異なりますが、30万戸~40万戸程度と考えられるので、今後の賃貸住宅の動向から考えると、賃貸住宅の20%程度が、高齢者集合賃貸住宅で占められると思います。

一般賃貸住宅の空室率は次第に上昇して現在では13%以上に達していると言われていますから、高齢者集合賃貸住宅がこの市場に対する活性化になると思います。

しかし、高齢者集合賃貸住宅は、元気な高齢者向けのものではありません。元気な高齢者は、自宅に継続して住むことが最良の選択です。健常な高齢者は、広い行動範囲を必要としていて18㎡や25㎡の住戸では到底満足することは出来ません。

一時期、「早めの住みかえ」という考えが言われました。これは、障害が発生する以前に、住居を変更してしまう、つまり、将来障害が発生した時には、移動する場所がないので、早めにその場所を確保する考えですが、よく考えると、居宅介護が充実していれば、移動する必要は少ないのが普通であり、もし居宅生活が出来ない場合にこそ、いろいろの形態の住まいが整備されているべきなのです。

障害を持つ高齢者を高専賃が対象とする場合、介護保険をどの様に使うかが問題となります。しかし、高齢者集合住宅に対する介護保険の使い方、あるいは、介護保険以前の食事、見守り、緊急対応サービスのやり方について、系統だった研究はあまりされていません。

現在、介護付き有料老人ホームでのケアを、外部サービスで賄うための介護報酬が決められていますが、これを使っているのはごくわずかな施設です。

高専協では、この様な、
高齢者集合住宅に対する介護保険を中心としたケアのありかたについて、研究会 を開くことになりました。 すでにご案内しているように、11月24日(水)に、東京都港区のコクヨホールにて開催したいと思います。

内容は、

【1】行政(国土交通省、厚生労働省)の高専賃におけるケアの考え方、

【2】松岡洋子氏(デンマークの高齢者福祉と地域居住―著者)の講演(予定)

【3】高齢者集合住 宅においてのケアをいかに行うかについてのシンポジウム

【4】実際に高齢者集合住宅でケアを行っている人たちの実践例の発表(一般演題)を予定しています。

一般演題のセクションでの、高専協会員の皆さんからの演題を現在募集しています。高専賃でのケアにおいての問題点、困った事柄などについての発表を期待しています。ぜひ、応募してください。そして、研究大会への参加もお願いいたします。

この研究会は、現在あまり研究されていない高齢者集合住宅でのケアの実態を明らかにするとともに、将来に向けてのケアの在り方を展望出来ればと思います。皆様の積極的なご参加を期待しています。


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カテゴリ◆◆高専協通信 第34号◆◆(メルマガ:高専協通信 第34号 2010年7月21日より)

高齢化が深刻になるに従って、今まで想定上で数値を見ていたものが、実際の生々しい問題となってきます。問題は各所に発生し、その度に改善策が提案されます。多くのものは、「取りあえず必要である。現実を見ると今困っていることが優先する。」などの緊急対策的政策が行われます。

2010年7月発表された、東京都の「高齢者居住安定化プラン」にもその傾向が見られます。この中では、今までの介護福祉政策と異なり、高齢者の問題を住まいの問題としてとらえている点では評価できますが、一方で、緊急対策の域を出ていないようです。

日本の高齢化が本格化した1980年代、高齢者問題は、介護問題としての捉え方であり、その対策としては、特別養護老人ホームの建設、老人保健施設の建設、あるいは医療機関の老人病院化を許容するなどのものでした。

この当時北欧に行った人は、かの地の老人ホームを見て、日本との違いを感じたものです。北欧諸国では、この時(1980年代~1990年代)すに大きな変換が起こっていました。すなわち、福祉政策と住宅政策の融合であり、住まいの確立が高齢者対策の基本だとの考えです。そして、自宅に対しての介護提供も住まいの問題として提起され、「住まいとケアの分離」が行われたのです。つまり、高齢者の住まいこそが対策の中心になったのです。

日本でも、遅まきながら、高齢者施設の居住環境改善の試みがなされ、特養の4人~6人室からせめて個室へと誘導がなされ、有料老人ホームにおいても、多人数室の解消→13平米の居室→18平米の居室へと、住まいの充実が図られ、一部では、住生活基本法に基づいた25平米の居室も普通になってきました。

高齢者住宅においても、単に高齢者の入居を拒まない高齢者円滑入居賃貸住宅の制度から、高齢者をもっぱら入居させる高齢者専用賃貸住宅の制度に発展し、今回の高齢者住まい法の改正でやっと25平米の最低基準面積が制度化されています。そして、住まいと介護の一体化も試みられようとしています。

これに対して、最近逆方向に向かう現象も起こっています。利用者の料金負担が高いとの理由で、特養の多人数部屋を許容する動きや(これは介護者の意向に沿ったものでしょう)、居室、住居の基準緩和、つまり、高専賃の基準面積を25平米から20平米へ(共有部分がある場合、18平米から13平米へ)、さらにケアハウスの基準として、居室面積が21.6平米から7.43平米へと引き下げられています。

これらの方策は経済上の問題を前提とし、現実的な解決策との取り上げられかたですが、一方で、これら対策の副作用は問題にしていません。過去20年間の積み上げが、基準を下げることによって一瞬のうちに無に帰すことになる可能性もあるのです。

しかし、もっと深刻な問題もあります。この様な現実が、日本の経済的力の低下によるもので仕方がない事だとしたら、あるいは、日本人が理念を目指す力をすでに失って、現実で満足するとすれば、この問題は、高齢者の住まいだけの問題でなく、社会全体の問題になります。積み上げたものは一瞬でくずれ、再度積み上げることには膨大な努力を必要とすることを考えても、後退する政策を取らざるを得ないとすれば、高齢者の住まいについての基準低下も許容するしかないのでしょうか?


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カテゴリ◆◆高専協通信 第35号◆◆(メルマガ:高専協通信 第35号 2010年8月4日より)

先日、高齢者専用賃貸住宅協会では、国土交通大臣と厚生労働大臣あてに、要望書を提出しました。要望書の提出に際しては、会員の皆さんからのご意見と、理事の皆さんの意向を踏まえた内容となっています。

要望書の要点は、施設から住宅への流れをさらに加速するために自宅に代わる住まいとしての高専賃を、「脱施設化」の手段として、普及させることを目的としています。諸外国で見られるように、高齢者人口の約4%程度の、高齢者集合住宅(高専賃)の建設(144戸程度になります)を促進するため国の支援を求めています。

結果として、現在の約10万戸足らずの、高齢者集合住宅数を、2025年までの15年間で100万戸以上の高専賃建設を行い高齢者集合住宅の総数を140万戸程度にまで高めようとするものです。

個別の要望内容の概略は、以下のようなものでが、詳しくは、当協会のホームページに掲載していますので、内容をご参照ください。

【1】高専賃の建設促進についての要望事項

(1)居住安定化推進事業の補助金の交付について;本年度160億程度の補助金を年間3万戸分(300億)に増額。
(2)住宅金融支援機構によるバリアフリー対応高円賃登録賃貸住宅融資の継続と拡充;
(3)建物買取制度(不動産ファンド等の活用);公的資金の入ったファンドにて、既存の高専賃を買い取ること。
(4)いわゆる“狭小ワンルーム規制”に関する要望について;高専賃をワンルームマンション規制の対象外とすること。

【2】高専賃建設促進のための税制上の要望事項

(1)不動産取得税について;課税基準の緩和要件を30㎡まで引き下げること。
(2)固定資産税について;上記と同様。
(3)登録免許税;課税基準の引き下げ。
(4)付帯サービス費の非課税化

【3】高専賃に居住する人に対しての援助

(1)年収による高専賃入居者への家賃補助;高優賃と同様の家賃補助政策。
(2)高優賃の指定拡大;高優賃がない地域への指定拡大。

【4】住まいとケアの分離を促進するための方策

(1)高専賃でないものは有料老人ホームとして届け出を容易に出来るようにする;
(2)高専賃においての居宅介護支援の集中減算の緩和措置;


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カテゴリ◆◆高専協通信 第36号◆◆(メルマガ:高専協通信 36号 2010年8月18日より)

今回は、日本の高齢者政策に対する、高専賃(高齢者集合住宅)の位置づけについて、考えてみたいと思います。

デンマークの例を見てみましょう。

デンマークでは、1987年に「高齢者住宅法」が成立しました。この法令では、プライエムという老人ホームの新規建設を中止し、さらに、既存の老人ホームも順次高齢者住宅(介護スタッフは常駐しないで、完全に外部サービスにて行う)へと改築していくというものです。

この様なドラスティックな改革は、高齢者の居住のありかたへの分析の上になされています。つまり、管理された老人ホームでは、高齢者の尊厳、自己決定、能力の維持を保つことは難しいとの判断です。高齢者集合住宅は、「地域居住」「住まいとケアの分離」を目標に進められています。これらの内容も、今までの老人ホームでの処遇に対する十分な分析をもとにして、実行されているのです。
 
その後、1996年には、介護スタッフが常駐するプライエボーリという形態(介護付き高齢者集合住宅)も登場しました。老人ホームの状態をいったん総括し、高齢者集合住宅へと移管した後に、その考え方をもとにして、より良い形態を選択していったのです。

つまり、デンマークでは、老人ホームから脱施設化による、高齢者住宅への流れが明らかになっています。そして、介護スタッフが常駐する場合(プライエボーリ)も、施設への回帰でなく、高齢者住宅の一形態としての位置づけをしっかりと行っています。

日本では、この反対に、すべてのものは、住宅から施設化する傾向にあります。2000年の介護保険の実施によって誕生した、認知症高齢者の為のいわゆるグループホーム(認知症対応型共同生活介護)や、それまでの有料老人ホームの反省から誕生した、介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)などが、当初の高齢者の住まいの視点から次第に管理化され、現在では立派な老人ホームへと変身していった過程がその事を物語っています。

日本の現状を見ると、老人ホームでの居住についての分析が行われず、高齢者の尊厳や自己決定への、老人ホームの管理体制がもたらす悪い影響も全く分析されてはいません。もっとも、いわゆる「個の確立」が不十分な日本の社会背景も高齢者の処遇には大きな影響を与えています。そして、高齢者集合住宅の促進と同時に、老人ホーム(例えば、特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームなど)の建設も同時に促進されるという奇妙な状態にあるのです。

西欧諸国での、老人ホームから高齢者集合住宅への移行の流れについては、高齢者自身の尊厳、自己決定の尊重と同時に、介護費用を削減すると言う動機があったことも事実です。

しかし、現在の日本のように、将来に向けての高齢者の処遇、つまり、ほとんどすべての人が通過する過程についての、実存的な分析や議論がなされず、あるいは、処遇される高齢者自身からの意見が慎重に聴取されない状態で、とりあえず現状の改善のみを優先する姿勢のもとに、いろいろの対策が決定されるさまは、その他の日本が抱えるいろいろな問題についての分析を行うことなしに、当面の対策のみ実施して、将来への対策を先送りする政治姿勢を反映していると、皮肉をこめて言わざるを得ないことは、 非常に不本意なことです。

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